2016年10月26日水曜日

第2回 SharePointのオンプレミスとクラウド、どちらを選ぶ?


情報共有のツールとして定番の製品であるSharePoint。はじめて聞く人にも分かり易く、SharePointを業務で活用する基本的な方法を紹介する連載です。

~目次~




■はじめに


 
 SharePointには、パッケージ製品として購入し、自社サーバーにインストールして使用する「オンプレミス版」と、マイクロソフト社が提供するオンラインサービスを期間契約で利用する「クラウド版」の2種類があります。
 クラウドサービスの業務利用が一般的に浸透した現在では、システム導入の際はクラウドサービスの採用も検討されています。今回はオンプレミスとクラウドの特徴と違いを紹介するとともに、実際に導入を検討する際のポイントを次の観点で考えてみたいと思います。

 ・活用シーンとアクセス範囲

 ・バージョンアップ

 ・導入、維持コスト

■活用シーンとアクセス範囲

 
 オンプレミスとクラウドの違いを見る前に、まずは業務におけるポータル(SharePoint)の活用シーンを考えてみましょう。

 ポータルサイトの活用シーンは様々です。社内からの利用はもちろんの事、営業担当者であれば社外から社内資料の検索をしたいこともあると思います。飲食店のように多店舗展開をしている場合、各店舗の従業員に向けた新メニューや、企画の情報などをポータルサイトに掲載したいなど、業種によるニーズもあります。また、近年ではテレワーク(情報通信技術を活用した場所と時間を問わない働き方)を積極的に導入する企業が増加しており、ポータルサイトによる情報共有の重要度が増してきております。

 このような様々なニーズを満たす為には、オンプレミスとクラウドはどちらが適しているのでしょうか?実はオンプレミスとクラウドのいずれも「カスタマイズを行なうことで」これらのニーズに対応することが可能です。ニーズを満たす為に必要なカスタマイズがより少ない方が、導入に適していると言えそうです。以下に導入時の初期状態(カスタマイズを行なわない状態)をまとめます。

SharePoint オンプレミスとクラウドの初期状態】
 

ニーズ

説明

オンプレミス

クラウド

社内アクセス

社内ネットワークからのアクセス



社外アクセス

社外ネットワークからのアクセス

不可


個人端末アクセス

社内ネットワークに参加していない個人端末からのアクセス

不可


アカウント管理

ポータルサイトにアクセスするための認証に使用するIDの管理

社内で管理しているActive Directory

クラウドで管理する

クラウドID

※カスタマイズにより社内で管理しているActive Directoryと同期させることも可能

 「業務のニーズを満たす」という観点では、ほとんどのケースでクラウドの方が少ないカスタマイズで導入が可能です。ただし情報セキュリティの観点で見ると、許可されたネットワークや端末からのみのアクセスに制限したいというニーズもあります。高いレベルでのセキュリティが望まれる業務では、クラウドへのアクセス制限のカスタマイズや、リスク管理のコストが高くなってしまう事もあります。

全ての業務の要件を満たすポータルを、適正なコストとリスクで利用するために、オンプレミスとクラウドの両方を採用して使い分けるという選択もあります。例えば本社内でのみ管理するデータはオンプレミスで社内ネットワークのみで利用し、社内ネットワークが繋がっていない店舗や在宅勤務社員への情報共有はクラウドを利用するという活用事例があります。

クラウド利用で大きなコストがかかるカスタマイズに、ネットワークによるアクセス制限があります。従来はアクセス制限を設定する為のサーバーをユーザーが準備・構築しなければなりませんでした。マイクロソフト社は、ネットワークによるSharePointへのアクセス制限を、クラウド側の設定だけで実現することが出来るサービスを新たに発表しました(下記リンク参照)。セキュリティ強化のニーズに対してもクラウドは日々進化を続けています。

【参考リンク SharePoint OneDrive における条件付きアクセス制御、暗号化制御、サイト分類機能の追加】


バージョンアップ


 次にバージョンアップについて見ていきます。

オンプレミスはパッケージ製品であり、現在までの実績としては約3年のサイクルで新バージョンが発売されています。製品バージョンアップの検討材料となる「メインストリームサポート期限」は製品発売から約5年です(制限付きの延長サポート期限もさらに約5年あり、必ずしもメインストリームサポート期限でバージョンアップしなければいけないわけではありません)。オンプレミス導入企業の多くが、5年程度は同じバージョンを使い続けるようです。一度導入すると、リプレースするまでは同じ機能・同じ使い勝手で利用し続けることができますが、長い期間バージョンアップを保留するほど、バージョンアップ時の製品機能のギャップが大きく、リプレース時のコストやユーザー教育コストが増える傾向にあります。

 クラウドはマイクロソフト社が管理するサーバー上に展開されており、常にバージョンアップがリリースされています。大きな変更時は事前にアナウンスがされますが、画面デザインの改善などのリリースは、ユーザーが気付かないレベルで比較的頻繁に行われているようです。クラウドはオンプレミスとは違い、ユーザー自身がバージョン管理をする必要が無い(管理できない)という特徴があります。常に最新の機能を使う事ができるという点はメリットになります。しかしシステム管理者の観点では、最新の機能を追随し適切にユーザーに案内をする日々の苦労を感じることも少なくないようです。オンプレミスのバージョンアップほどの苦労ではありませんが、日々おこなわれる小規模なリリースに随時対応していく必要があります。

 SharePointに限らずクラウド導入で気を付けなければならない点は、サポートブラウザの管理です。クラウドは現在リリースされている主要ブラウザの最新バージョン、および最新から一定の世代数までの旧バージョンがサポート対象となります。クラウドがサポートするブラウザへ適宜バージョンアップする必要がありますが、社内で利用している他システムが旧バージョンのブラウザのみサポートしている場合に、導入の課題となる場合があります。「IEを社内システム用に、Chromeをクラウド用に…」といった利用サービス毎の使い分けが必要になるケースもあるようです。

SharePoint オンプレミスとクラウドのバージョン管理】
 

項目

説明

オンプレミス

クラウド

バージョンアップのタイミング

SharePointがバージョンアップされ最新の機能を使う事ができるタイミング

3-5

(ユーザー任意)


随時

バージョンアップの対応にかかる時間

SharePointのバージョンアップ対応にかかるシステム管理者の時間

プロジェクトにより数か月~

バージョンアップの内容により数時間~

サポートブラウザの管理

SharePointの利用がサポートされるブラウザの管理

製品がサポートするバージョンを利用

随時最新バージョンの導入が必要

ハードウェアの管理

ハードウェアの管理と保守切れ対応

必要

不要

 バージョン管理の観点では、積極的に最新機能を利用していきたい場合はクラウドが適しており、決められた同じ使い方で長期間運用したい場合はオンプレミスが適しているようです。

■導入・維持コスト


 最後に導入・維持コストについて見てみましょう。

 オンプレミスでは、製品ライセンスの購入(※ライセンスの購入方法の詳細は多岐にわたるため本稿では割愛します)に加えてサーバーの構築が必要となります。「Active Directory」が構築済みである前提で、必要なサーバーは主に「DBサーバー」と「Webサーバー」です。DBサーバーには、マイクロソフト社製品であるSQL Serverをインストールします。SharePointのデータはSQL Serverで管理されます。Webサーバーには、SharePointをインストールしDBサーバーに接続します。このほか、システムの規模に応じた冗長化やネットワーク構成、業務要件に応じた追加の設定等が必要になります。このように、オンプレミスの導入・維持には専門的な知識を持ったシステム管理者や、専門の業者による対応が必要です。さらに、急な業務拡大や組織統合などによって利用ユーザーが急増する場合、ユーザー数に応じたサーバーの拡張を実施する必要があります。

 クラウドでは利用人数に応じた利用契約をし、すぐにSharePointを使い始めることが可能です。マイクロソフト社が管理するクラウドサービス上で展開されているため、急な業務拡大や、組織統合などによって利用ユーザーが急増した場合でも、ハードウェアリソース等を気にすることなく必要ライセンスの追加契約だけで利用することが可能です。ただしネットワークによるアクセス制限や、社内で利用しているActive Directoryのアカウントと同期してシングルサインオンを実現するなどのカスタマイズを実施する際には、専門的な知識を持ったシステム管理者や、専門の業者による対応が必要です。

以下にオンプレミスとクラウドのコスト比較のサンプルを掲載します。

【オンプレミスとクラウドの導入・維持コストの比較】





 オンプレミスは、導入時と保守切れ・バージョンアップ対応の入れ替え時に大きなコストがかかります。クラウドは、利用人数・期間に応じてコストがかかっていきます。トータルでどちらが低コストで利用できるかはケースバイケースとなりますが、利用人数の増減に応じた予算の見直しに対応しやすいのはクラウドの特徴となっています。


 マイクロソフト社は、「Office 365」というクラウドサービスの一部としてポータル機能であるSharePointを提供しています。同様にメール機能であるExchangeなど様々な機能を「Office 365」として提供しており、コストメリットのあるサービスとして、オンプレミスからの移行先として注目されています。

■今回のまとめ

 
 今回はSharePoint導入検討のための参考として、オンプレミスとクラウドの「特徴と違い」、「検討のポイント」について考察しました。次回以降では、実際にSharePointを業務で活用する為の基本的な機能の紹介をしていきたいと思います。

ブログアーカイブ
前回までのブログと今後の予定
 SharePointのバージョンアップ 第2回移行ツール(Sharegate)の紹介 2017年11月28日記事
 SharePointのバージョンアップ 第3回SharePoint移行に関する注意点 2018年1月予定
 
その他以下ブログを発信中です。
 
 
機械学習(Azure Machine Learning)の入門からビジネス活用へ


 

2016年10月3日月曜日

業務で活用する!SharePoint入門

第1回 情報共有ツールの核となるSharePoint


  情報共有のツールとして定番の製品であるSharePoint。はじめて聞く人にも分かり易く、SharePointを業務で活用する基本的な方法を紹介する連載です。
 
~目次~


 

■はじめに

 

 SharePointという製品をご存知でしょうか?SharePointMicrosoft社が開発・発売する情報共有ツールであり、世界中の企業、学校、団体などに多くの導入実績があります。導入規模(ユーザー数)は数名から10万人以上まで様々であり、幅広い現場で活用されています。


 本連載では「業務におけるSharePoint活用」をテーマに初心者にも分かり易い表現で情報発信をしていきます。

 

■業務における情報共有ツール


 冒頭でSharePointを情報共有ツールと紹介しましたが、業務で活用される情報共有ツールには様々なものがあります。

 情報共有ツールで最も広く使われているものは「メール」です。 宛先に指定したユーザーに瞬時に情報を送信することが出来ます。近年はスマートフォンの業務利用も進んでおり、ほぼリアルタイムにメールの受信確認が出来る環境が増えてきました。


 次に「ファイルサーバー」も定番です。複数人で共有するファイルを設定されたサーバーに保管します。ユーザーやグループごとにフォルダ・ファイルのアクセス権限を設定する場合もあります。

 

 また、多くの企業では社内向けの「全社ポータルサイト」を公開しているのではないでしょうか。全社に向けたお知らせや通達など、主に総務部門・人事部門が発信する情報が社内からしかアクセスできないWebサイトとして提供されています。ポータルサイトの活用が進んでいる企業になると、各事業部門がそれぞれの目的に応じて「事業部ポータルサイト」や「プロジェクトポータルサイト」などを利用しています。実は、SharePointはこれらのポータルサイトをはじめとしたWebサイトとして、情報共有の場を構築するためのツールなのです(ポータルサイト構築以外にも様々な機能がありますが、今後の記事で順を追って解説します)。
 

SharePointで構築したポータルサイト例】


 


 

■「メール」「ファイルサーバー」の限界

 
 代表的な情報共有ツールとして「メール」「ファイルサーバー」「ポータルサイト(SharePoint)」の3つを紹介しました。これらの長所と短所を把握して上手に使い分けることで、業務効率をアップすることが可能です。

 人それぞれ携わる業務により、よく使用するツールは異なってきます。メールやファイルサーバーだけで事足りる!と感じる方も多いのではないでしょうか?確かに、小規模または固定メンバーのグループ内の情報共有においては、メーリングリストとファイルサーバーだけの運用で簡単かつスピーディに情報共有が出来ると思います。しかし、これらのツールにも苦手とするところがあり、状況によって課題が生じることになります。

 事業の拡大や組織変更で、たくさんの新規メンバーが参画してきた場合を想像してみてください。事業関係者の連絡先、業務に使用する書類データの所在と更新ルール、その他新規参画メンバーへの案内事項などなど、スムーズに共有することが出来るでしょうか?まず、メールデータについてはメーリングリストの過去メールをメンバー各自がダウンロードすることになります。そしてメンバー間の個人宛でやり取りされたメールにあるナレッジは個別に転送してもらう必要があります。次に、ファイルサーバーですが膨大な書類データが多くの階層に分類されている場合、それぞれの階層の目的と役割を一つひとつ説明する必要があります。また、ファイルサーバーの検索機能は主にファイル名からの検索であり、目的のキーワードに対するヒット率が低くなる傾向にあります。業務に対応する階層を把握していない新規メンバーが目的の書類データにたどり着く事は非常に困難です。

 「メール」「ファイルサーバー」だけで情報共有する場合に生じる課題は、新規メンバーのものだけではありません。例えば「ある書類データの最新版」を探す場合を考えてみてください。メールの場合、メールデータの管理は個人単位であり目的のデータを取得するスピードと精度は各個人のスキルに依存します(人によっては見つけることができない、または古いバージョンを最新版として使用してしまう事もあります)。ファイルサーバーであればバージョン管理が可能であるように思われるかもしれませんが課題があります。多くの人数で最新版をアップロードする場合、誰かが誤ったデータで上書きしてしまい最新の情報が失われてしまう事があります。上書きミスを防止するため「ファイル名 + 日付 + 更新者名」などの命名規則で運用するケースも多々ありますが、様々なバージョンのファイルが乱立するため、検索精度が低下することになります。

 このように、組織の規模が大きくなると「メール」「ファイルサーバー」のみで情報共有する場合に生じる課題がいくつもあることはご理解いただけると思います。

 

■「ポータルサイト」としてのSharePointによる解決

 
 「SharePoint(ポータルサイト)」を利用すると、組織の規模が大きくなった場合に生じる情報共有の課題の多くを解決することが可能です。ポータルサイトという形式であるため、新規メンバーでも既存メンバーと同じ情報にすぐにアクセス可能です。さらに、ファイルサーバーの弱点であった、目的の書類データへの導線を提供することが可能です。バージョン管理機能も提供されており、1つのファイル名で最新のデータと過去のデータを確認することが可能です。さらに充実した検索機能も提供されています。

 このように、ユーザーにとっては至れり尽くせりのSharePointですが、メールやファイルサーバーと比べて、導入・運用の難易度とコストが高いという弱点があります。ポータルサイトには管理者が必要であり、組織の全ての情報を管理することは適切ではありません。よって、個人間の情報伝達はメールで、更新・参照頻度の高い情報はSharePointで、更新・参照頻度の低い大量のデータ(アーカイブデータ)はファイルサーバーで、といったように各ツールを上手に使い分ける必要があります。

 下記に情報共有ツールの特徴を表にまとめます。

【情報共有ツールの特徴】

特徴


説明


メール


ファイルサーバー


SharePoint

(ポータルサイト)


プッシュ通知


目的の相手に情報をプッシュ通知し、素早く情報を伝えることが出来る。




×


△※1


ナレッジ蓄積


業務ノウハウを誰にでも閲覧可能な形で蓄積し提供することが出来る。


×






導線提供


目的の書類データへの導線を提供することが出来る。


×






検索機能


キーワード検索の精度。



 






バージョン管理


最新版の所在が明確であり、上書きミスによる情報の損失を防止することが出来る。


×






導入・運用コスト


導入・運用の簡単さとコストの低さ。






△※2


※1 SharePointには特定の情報が更新された場合のメール通知機能を設定してプッシュ型で情報を配信する機能もある

※2 オンプレミスの場合はサーバーの構築作業が必要、クラウド版の場合はサーバー構築作業が不要で比較的安価に利用開始可能
 

■ポータルの構築・運用に必要な機能

 
 ポータルサイトの構築はSharePointを使わずとも可能です。最も古くから行われている方法は、社内のIT管理者がHTMLで作成し、記事をアップロードしていくというものです。もちろんこの方法では、技術的な専門知識が必要なため情報更新ができる担当者が限られ、大量の最新情報をコンスタントに発信することは困難になります。

 SharePointには以下にあげるポータルの構築・運用に必要な機能が充実しています。

SharePointの主な機能】


機能


説明


ページ作成・アイテム投稿


HTMLを記述することなく、Webブラウザ上の操作でページ作成やお知らせ等のアイテム投稿をおこなうことが可能です。


ファイル管理


・バージョン管理機能により設定した世代数のファイルを保持します。誤って上書きした場合にも簡単に過去のバージョンを参照・ロールバックすることが可能です。

・ファイルに追加のプロパティ情報を持たせることが可能です。例えば業務上のカテゴリ情報を追加することで、カテゴリの分類でファイルを探すことが可能になります。


検索


・ポータルサイト全体または特定の場所に対してキーワード検索をすることが可能です。


アクセス権限設定


・ユーザーやグループ毎にポータルサイトに対する編集・アイテム投稿権限を付与することが可能です。編集権限を委任し業務の担当者に直接情報を掲載してもらう運用も可能です。

・ユーザーやグループ毎にアクセス可/不可の設定をおこなうことが可能です。


業務テンプレート


・「ドキュメント管理」「お知らせ」「リンク集」「掲示板」などの業務でよく使うテンプレートが標準で提供されており、簡単な設定作業のみで利用開始が可能です。


テンプレート展開


・サイト構成をテンプレート化して横展開することが可能です。例えば、事業部ごとに同じ構造のポータルサイトが必要な場合に、効率よく展開することが可能です。



■今回のまとめ


 今回は情報共有ツールの中でのSharePointの位置づけと特徴について概要を説明しました。次回以降の記事では、SharePointを理解するための基礎知識や業務での活用例を紹介していく予定です。Microsoft社が提供するクラウドサービスであるOffice 365※についても、SharePoint関連の情報を中心に紹介する予定です。

Office 365のサービスにはクラウド版のSharePointである「SharePoint Online」が含まれます。


ブログアーカイブ
前回までのブログと今後の予定
 SharePointのバージョンアップ 第2回移行ツール(Sharegate)の紹介 2017年11月28日記事
 SharePointのバージョンアップ 第3回SharePoint移行に関する注意点 2018年1月予定
 
その他以下ブログを発信中です。
 
 
機械学習(Azure Machine Learning)の入門からビジネス活用へ